クリスマスプレゼント

“サンタはお父さんだった“
そうカミングアウトしたのは確か去年だったと思う。さすがに5年生ともなるとバレてしまうわけで、しつこく詰められて「そうだよ」と言ってしまったのだ。
クリスマスイブの朝、寝ている僕のところに娘がやってきた。クリスマスプレゼントを決めたから、Amazonで注文してほしいみたい。
「大丈夫、ちゃんと予算以内のもの選んだから」
そう言って、慣れた手つきで僕のスマホで検索をする。
クリスマスプレゼントに予算があるなんてつまらない。買うかどうかは別として、リクエストは聞くべきだ。そう思うのだが、高価なものを欲しがる娘に上限を設定してしまったのだっけ。
クリスマスイブの夜。
ケーキに火を灯して、「メリークリスマス!」と言ってロウソクの火をけす娘。息子はロウソクを消すタイミングにも来なくなってしまった。
「いつかは子供達も友達か恋人と過ごすことになるんだね。寂しいね。」
なんてことを妻が言った。娘も来年中学生になる。いつまでロウソクを消してくれるものか。ケーキに乗っているサンタの焼き菓子。どっちが食べるかでケンカしてた時が懐かしい。
子供の頃、クリスマスはキラキラしていた。いつも食べないようなご馳走が並び、食後はケーキを食べる。父も母もいつもより優しく接してくれる。ロウソクの炎は柔らかい空気をつくり、その陰影があったかい気持ちにさせてくれる。雪があるところで育ったことも、クリスマスを神聖なものにしてくれていた。
いつからだろうか?クリスマスがキラキラしたものから、ほんわかしたものに変わってしまったのは。そして、普通の日常になりつつある。
サンタがいなくなって一番寂しいと思っているのはまさかサンタクロースの方だったなんてね。もっとわがまま聞いてあげれば良かった。
プレゼントはドールハウスがいいという。一緒に作りたいそうだ。夏休みの工作で、百円ショップで材料を買ってドールハウスを作ったことがあった。あれが楽しかったらしくて、また一緒に作りたいと思っているらしい。
「いつ届くの?」と聞かれ、25日になるというと、つまらなそうな顔をした。
朝、ツリーの下にプレゼントが置いてある。
サンタが僕であっても、プレゼントの中身がわかっていても、あのドキドキとワクワクした空気に包まれた朝を期待してるようだった。
娘はプレゼントと一緒に添えてある手紙を楽しみにしていた。
「今回はAmazonから届いちゃうので手紙ないよ。」
そういうと、「プレゼントと手紙はセットでしょ!」とふてくされた感じで言ってきた。
僕は毎年、誕生日とクリスマスに手紙を書く。大した内容じゃないけど、あなたが大切な存在であるというようなことを書いている。
最近は読んだ後、「キモい」って言われるから、そろそろやめたほうがいいのかなと思っていたんだけど、案外そうでもなさそうだ。
25日は朝から出張で、家を出る時にツリーの下に手紙を置いてきた。2人のリアクションを見ることはできないけど、気持ち悪がられながらも少しは喜んでくれていると思う。
クリスマスを家族で過ごせるのはあと数回かもしれない。でも、毎年手紙を書くことはできる。いつも言葉では言えないことを、キモがられるような言葉を、小さい時と同じような気持ちで、素直に書く。その時その時の思いを、心の赴くままに。
もしかしたら、これが最高のクリスマスプレゼントなのかもしれないね。
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今週も「週刊秋葉塾」を読んでいただき、ありがとうございます。
何年ぶりだろう。母から手紙をもらった。変わらない母の筆跡。
手紙にはこう書いてあった。
「この手紙を書いていると、優しい薫さんのことが思い出されて涙が出てきます。」
やっぱり手紙っていいですね。
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